地獄とは、そうまさにあのことを言う。
心の底からココロばぁさんに謝りたい。あんたくらいが何ほどのことか。
世の中にはそれ以上に恐ろしく克つ、相乗効果的におぞましい人々の世界があるのだと身を持って知った。
無知というのは恐ろしい。
知らないからこそ、突撃もできるが…それは無事にことを済ませられたからこそ振り返れることである。
知ってしまった今は………一生振り返りたくはないっ!
ギリッと咥え煙草を噛みしめて、食いちぎってしまう。
それ程にあの二年間は地獄だった。
シャボンティ諸島に帰還するのに、どうしても奴らの船で送ってもらう必要があったのが、何より悔しい。けれど、それが条件で戦い抜いたあの地獄。目的を達成できたことは嬉しかったのだから、悔し嬉しのこの背反ぶりは厳しい。
やっと降り立った岸でさっっさと化け物共と別れて、あまりの開放感あまりの嬉しさについ、
「女だーっ!」
と喚いたのは一生の不覚。すまねぇ、レィディ。今までの地獄があまりにも酷くて…つい…つい…。ああ、おっじょうさーんっ!
女性を逃げさせるなんて、ワイルドサンジの風上にもおけねぇ。もっと身を引き締めて…ナミッさん! ロビンッちゃん! 達との再会をっっ!
願ってぼったくりバーに行って。でも真っ先に聞いたのは、何故かあの剣士の名前だった。
真っ先に聞いてしまった自分に、ちょっと苦笑した。
一番最初に消えたあいつが、一番最初に現れた。
思い出すだに未だに躰のどこかが痛む、あの消え方。
あいつが無事なのか、生きているのか。
何故かもう、それを思わずにはいられなかった日々が、どうしても消えずに胸の奥に残っている。
煙草をさぐるように見せて胸ポケットを探れば、手配書の束がある。
そこの一番上には、あいつがいる。たまたまだ、なんて人にはいくらでも言える。でも一番に見ていたのは…やっぱりあいつだったと自分だけが知っている。
二年。
急いでバーを飛び出し、サニーへと走る。
何もかもが、二年越し。
あいつらは全員無事なのだろうか。
どう変わったのだろうか。
そしてどう変わってないのだろう。
変わった自分を見せて、変わらなかった自分をも見せていきたい。沢山のレシピであいつらに、パラダイスを見せたい。
もうあの頃のような疲れなんてみせさせねぇ。もっともっと暴れられるよう。もっともっと早く回復できるよう。もっともっと強い体に。
作ってやるから。
………ゾロ。
買い出しの場で、一際逞しくなっていた隻眼の男に会うのはもう少し。
新しい船出の準備も、あともう少し。
一歩が確実に未来を映し出した。
そんなわずかな一時の瞬間の出来事。
終了(10.11.3)
『イルガイズ3』にて配布したペーパー裏に書いた超SSS。
あげてもな…と思いつつ、やはり今しかないかとちょっと上げてみます(笑)
|